
【伊勢神宮の観光ガイド】外宮と内宮の見どころ・参拝順・アクセスを徹底解説
日本の全神社の中で最も格式が高い「伊勢神宮」は、”日本人の心のふるさと”とも言える特別で神聖な場所。
年間の参拝者数は700万〜800万人にのぼり、2,000年以上の歴史を持つ神域で日本の文化と信仰を強く感じられる。
この記事では、伊勢神宮の歴史・ご利益といった基本情報から、見どころ・参拝マナー・回り方まで網羅的に紹介していく。
初めて訪れる人にもわかりやすく、事前に押さえておきたい情報をまとめたので、ぜひ最後まで読んでほしい。
伊勢神宮ってどんなところ?
三重県伊勢市に鎮座する「伊勢神宮」は、「お伊勢さん」の愛称で親しまれる日本で最も格式の高い神社。
正式名称を「神宮」といい、全国約8万社の神社が本宗(ほんそう/特別な存在)だ。
なお、伊勢神宮というひとつの神社があるわけではない。
「内宮(ないくう)・皇大神宮」と「外宮(げくう)・豊受大御神」を中心に、別宮・摂社・末社・所管社を含めた125の宮社から成り立っている。
内宮は日本国民の総氏神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)、外宮は衣食住の守り神・豊受大御神(とようけのおおみかみ)を祀り、古代以来崇敬を集めてきた。
静謐な自然と独特の歴史が調和し、日本信仰の原点を体感できるのが伊勢神宮の魅力。
簡素で清廉な美を保つ数々の建造物、神域を覆う老樹の森や清流など、一帯に息づく文化・伝統が参拝者を惹きつける。

伊勢神宮のご祭神とご利益
上述の通り、伊勢神宮の中心は「内宮」と「外宮」であり、それぞれに祀る2柱がご祭神かつ主祭神だ。
内宮には、日本神話の最高神かつ皇室の祖神「天照大御神」が祀られ、国家の安泰・強い開運と厄除け、心の平和などのご利益があるとされる。
天照大御神の母性的な神格によって、家族の健康や夫婦円満を祈願する参拝者も多い。
一方、外宮には天照大御神のお食事を司る神様「豊受大御神」が祀られ、衣食住、産業の守護、商売繁盛など、安定した暮らしをもたらすとされる。
いずれも様々なご利益が期待できるが、感謝の気持ちを忘れずに静かな気持ちで向き合うことが大切。

伊勢神宮の成り立ち
日本神話に基づく伝承によると、伊勢神宮の成り立ちは約2,000年前に遡る。
もともと天照大御神は宮中(天皇の住まい)に祀られていたが、第10代・崇神天皇(すじんてんのう)が宮中外に祀るように決めた。
そこで皇女・倭姫命(やまとひめのみこと)が、天照大御神を祀る場所を求めて全国を巡った結果、お告げにより伊勢の五十鈴川上に鎮座地を定めて社殿を建立する。
これが伊勢神宮の起源とされている。
時は経ち中世から近世にかけて、伊勢神宮を中心とした伊勢信仰が全国に広まっていく。
特に江戸時代(1603年〜1868年)には「一生に一度はお伊勢参り」という言葉が生まれるほど、伊勢参拝がブームとなった。
明治時代(1868年〜1912年)以降は、国家的な宗教行事としての性格も帯びながらも、日本人の精神的な拠り所となり、今日まで長い歴史を刻んできた。

伊勢神宮へのアクセス
伊勢神宮の敷地は非常に広く、内宮と外宮は5.5kmほど(徒歩1時間前後)離れている。
最寄り駅も内宮は近鉄鳥羽線「五十鈴川駅」、外宮はJR参宮線・近鉄山田線「伊勢市駅」と異なるので、アクセスする際は注意が必要だ。
ここでは、日本の主要都市「東京」・「大阪」・「名古屋」・「福岡」から、内宮と外宮の最寄り駅への行き方を紹介する。
伊勢神宮・内宮の最寄り駅までのアクセス
| 起点 | 経路 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 東京駅 |
1. JR「東京駅」から新幹線・のぞみ号に乗車し、「名古屋駅」で下車、徒歩で近鉄名古屋線まで移動 2. 近鉄「名古屋駅」から近鉄名古屋線・特急(全席指定席・要特急券)に乗車し、「五十鈴川駅」で下車 |
約3時間30分 |
| 大阪駅 |
1. JR「大阪駅」からJR大阪環状線外回りに乗車し、「鶴橋駅」で下車、近鉄大阪線まで移動 2. 近鉄「鶴橋駅」から近鉄大阪線・特急(全席指定席・要特急券)に乗車し、「五十鈴川駅」で下車 |
約2時間5分 |
| 名古屋駅 | 近鉄「名古屋駅」から近鉄名古屋線・特急(全席指定席・要特急券)に乗車し、「五十鈴川駅」で下車、到着 | 約1時間30分 |
| 博多駅 |
1. JR「博多駅」から新幹線・のぞみ号に乗車し、「名古屋駅」で下車 2. 「名古屋駅」からJR快速・みえ号名古屋線に乗車し、「五十鈴川駅」で下車 |
約5時間20分 |
※五十鈴川駅からは三重交通バスで内宮前まで行き降車後、徒歩15分ほどで着く
伊勢神宮・外宮の最寄り駅までのアクセス
| 起点 | 経路 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 東京駅 |
1. JR「東京駅」から新幹線・のぞみ号に乗車し、「名古屋駅」で下車、徒歩で近鉄名古屋線まで移動 2. 近鉄「名古屋駅」から近鉄名古屋線・特急(全席指定席・要特急券)に乗車し、「伊勢市駅」で下車 |
約3時間20分 |
| 大阪駅 |
1. JR「大阪駅」からJR大阪環状線外回りに乗車し、「鶴橋駅」で下車、近鉄大阪線まで移動 2. 近鉄「鶴橋駅」から近鉄大阪線・特急(全席指定席・要特急券)に乗車し、「伊勢市駅」で下車 |
約2時間 |
| 名古屋駅 | 近鉄「名古屋駅」から近鉄名古屋線・特急(全席指定席・要特急券)に乗車し、「伊勢市駅」で下車 | 約1時間20分 |
| 博多駅 |
1. JR「博多駅」から新幹線・のぞみ号に乗車し、「名古屋駅」で下車 2. 「名古屋駅」からJR快速・みえ号名古屋線に乗車し、「伊勢市駅」で下車 |
約5時間 |
※伊勢市駅からは徒歩10分ほどで外宮の鳥居に着く
伊勢神宮の参拝時間と料金
「伊勢神宮」の参拝自体には、料金がかからない。
参拝時間は時期によって異なるため、下記の表を確認してほしい。
- 1月〜4月・9月
- 5:00〜18:00
- 5月〜8月
- 5:00〜19:00
- 10月〜12月
- 5:00〜17:00
伊勢神宮のお勧め観光シーズンは?
伊勢神宮はどの季節に訪れても美しい景観が見られるが、特にお勧めの観光シーズンは春と秋。
スケジュールの調整が可能なら、どちらかの季節に旅行してほしい。
神聖な雰囲気の中で桜が咲き誇る「春の伊勢神宮」
伊勢神宮は桜の名所として知られており、春は参拝と花見を同時に楽しめる魅力的な季節。
見頃の3月下旬から4月上旬になると、約600本の桜が境内を中心に咲き誇り、神聖な空気と調和した景観が広がる。
特に宇治橋や五十鈴川(いすずがわ)の清流とともに桜並木が織りなす景色は、心が洗われるような美しさだ。
ソメイヨシノを中心にヤマザクラやエドヒガンなど、桜の種類が多彩なのも特徴。
同時期には春の風物詩「五十鈴川桜まつり」も開催され、屋台・イベントで賑わうほか、日没〜21時はライトアップにより夜の神域に華やかな彩りを添える。
幻想的な光に包まれた桜は、昼間とはまた違った雰囲気を演出し、静寂の中でゆったりと堪能できる。

紅葉が彩る「秋の伊勢神宮」
秋の伊勢神宮は、神聖な雰囲気と美しい紅葉に包まれる。
例年11月下旬から12月上旬に見頃を迎え、カエデ・モミジ・イチョウの木々が色づいた境内で参拝とともに豊かな秋景色を楽しめる。
例えば、五十鈴川の清流に映る赤や黄色の紅葉は絵画のような絶景で、風日祈宮橋から眺める朱色の橋とのコントラストは神域ならではの雅を感じさせる。
静かに味わいたい人は、落ち着いた風情が漂う外宮の「まがたま池」周辺がお勧めだ。
空気が澄んでいるため、一帯が映えやすく、参道の落ち葉や古木からも秋の趣を堪能できる。

伊勢神宮の所要時間
伊勢神宮の参拝における所要時間の目安は以下の通り。
外宮・内宮ともに境内全体をゆっくり散策し、食事や休憩なども含めると半日以上かかるので、余裕を持ったスケジュールを組むのがお勧め。
- 外宮のみ
- 30分〜1時間
- 内宮のみ
- 45分〜1時間30分
- 外宮と内宮の両方
- 2時間〜3時間
※外宮から内宮への移動は、路線バスで25分前後。徒歩で1時間前後
伊勢神宮の内宮エリアの見どころ5選
約2,000年の歴史を持つ伊勢神宮・内宮エリアは、日本の全神社で最も尊い場所。
正宮の荘厳な神明(しんめい)造りの社殿、御装束神宝を納める東宝殿・西宝殿などがあり、宮廷の儀式や神事が今なお厳格に守られている。
長い参道を進むと神域に繋がり、「心のふるさと」と呼ばれる日本の原風景が広がる。
境内は広く自然豊かな散策路が整備され、敬虔な気持ちで訪れた参拝者に静かな心の安らぎをもたらす。
参拝は右側通行が厳守で、様々な礼儀作法を通じて神聖な体験ができる。
内宮エリアの主な見どころを紹介していこう。
1. 正宮 皇大神宮
「正宮皇大神宮」のご祭神は、日本神話における最高神かつ皇室の祖先神・天照大御神。
古来より皇室・朝廷と深く結びつき、国家的な祭祀の中心として尊崇を集めてきた。
日本国民の総氏神でもあり、ご利益は国家の安泰・健康長寿・産業発展、強い開運と厄除けなど幅広い。
三種の神器のひとつ「八咫鏡(やたのかがみ)」をご神体とし、鏡に天照大御神自身の神霊が込められたものとされている。
正宮皇大神宮の魅力は、場そのものの厳粛さだ。
鬱蒼とした社叢に包まれた歩道が続き、自然と沈黙が参拝者の心を整え、飾りを抑えた神明造の社殿建築が神域の清潔感を際立たせる。その場に立つと、身が引き締まるだろう。

2. 荒祭宮
「荒祭宮(あらまつりのみや)」は、天照大御神の荒御魂(あらみたま/神の霊魂)をご祭神に祀る内宮の第一別宮。
別宮とは正宮に次いで尊い神社で、内宮には10社、外宮には4社の別宮があり、その中で最も格式の高い別宮を第一別宮と呼ぶ。
荒祭宮の由緒は非常に古く、祭典では正宮に続いて奉仕される重要な社のひとつ。
荒御魂は行動力、エネルギーを司る神威を持ち、現状打破や新しい挑戦への力を授かるとされている。
一帯には静寂と緊張感を併せた独特の空気感が漂い、他の別宮よりやや大きめの社殿から強力なパワーを感じられる。

3. 風日祈宮
「風日祈宮(かざひのみのみや)」は、級長津彦命(しなつひこのみこと)、級長戸辺命(しなとべのみこと)をご祭神に祀る内宮の別宮。
これらの神々は風雨を司り、海上の厄災避けや交通安全、豊作祈願などのご利益があるとされる。
風日祈宮の由緒は古く、もともとは「風神社」と呼ばれていたが、元寇(1274年・1281年)の際に神風を起こして日本を守った功績により1293年に別宮へ昇格した。
以降、内宮の重要な祭祀の場として信仰が続いている。
正宮からほど近い神域の一角に鎮座し、うっそうと茂る古木に囲まれた静かな社地が印象的だ。

4. 宇治橋
「宇治橋」は、伊勢神宮・内宮の参道口、五十鈴川に架かる全長約101.8m・幅約8.42mの木造の和橋。
日常の世界と神聖な世界を結ぶ架け橋と言われており、正面に立つ美しい大鳥居の姿を眺めると清らかな気持ちになる。
宇治橋を渡ることが内宮参拝の始まりと言え、参拝者は徐々に近づく神域に向けて心が整えられていく。
また、朱色の欄干(らんかん/手すり)には伝統的な擬宝珠が施され、橋脚には水に強いケヤキが39本使われるなど、荘厳な佇まい・造形も見どころだ。

5. 五十鈴川
伊勢市を流れる「五十鈴川」は、神路山・島路山を源に内宮域を貫き、最終的に伊勢湾へ注ぐ全長およそ20kmの河川。
別名「御裳濯川(みもすそがわ)」と呼ばれ、倭姫命が御裳のすその汚れを清めた場所としても知られる。
宇治橋や御手洗場(みたらし)など神域との結びつきが深く、水の透明度が高い川そのものが参拝者に癒やしと心の平穏をもたらす。
川のせせらぎと森の静けさが調和した五十鈴川は、多くの和歌に詠まれてきた内宮エリアの静謐さを象徴する景観だ。

伊勢神宮の外宮エリアの見どころ5選
約1,500年の歴史を持つ伊勢神宮・外宮エリアは、豊かな森と静寂に包まれた神域。
伊勢市の中心部にあり、内宮の祭祀を支える重要な役割を果たしてきた。
生活の節目・地域行事と結びついた数多くの宮社から成り立ち、文化の息遣いを直接感じられる親しみやすい雰囲気が印象的だ。
全体の造りは内宮と似ているが、屋根に載る鰹木の数や格式に応じた建築など、細かい部分に違いがあるので見比べてみるのも面白い。
外宮エリアの主な見どころを紹介しよう。
1. 正宮 豊受大神宮
「正宮 豊受大御神」のご祭神は、衣食住・産業の守護を司り、特に御饌都神(みけつかみ/食の神)として知られる豊受大御神。
約1,500年前に天照大御神のお告げによって、丹波国(現在の京都)から伊勢の地にお迎えされた。
古くより地域の発展や豊かな暮らしを支える神様として厚い信仰を受け、ご利益は五穀豊穣・商売繁盛・生活安全など多岐にわたる。
現代においても多くの人の信仰対象であり、伊勢神宮の中心的な存在だ。
神聖な森・緑に囲まれ、静かな自然の中に整然と佇む社殿の風格が豊受大御神の魅力。
日常の祈りと結びつく独特な雰囲気が漂い、参拝者に平穏と癒しをもたらす。

2. 多賀宮
「多賀宮(たかのみや)」は、豊受大御神の荒御魂をご祭神に祀る外宮の第一別宮。
創建は外宮と同時期、古代法典「止由気宮儀式帳」・「延喜神名式」に多賀宮だけ記載があるなど、他の別宮に比べ古くから特別視されている。
檜尾山の高所に鎮まるために、明治時代以前は「高宮」の名で呼ばれていた。
積極的な神格を持つ荒御魂は、新たな挑戦の成就・決断の後押しといったご利益が期待でき、個人的な願いごとを叶えてくれるパワースポットとして人気が高い。
多賀宮の最大の特徴は、社前まで98段の石階段を登る参道だ。
上り切ったときに受ける風と静けさ、目の前に広がる神聖な空間が参拝体験を印象深いものにする。
※足腰の弱い方は階段手前の遙拝所で参拝可能

3. 土宮
「土宮(つちのみや)」は、大土乃御祖神(おおつちのみおやのかみ)をご祭神に祀る外宮の別宮。
もともとは山田原(現在の伊勢市)の鎮守神だったが、外宮の鎮座後は宮域に取り込まれ、平安時代(794年〜1185年)に宮川堤防の守護神として別宮に昇格した。
現在も外宮の古い祭祀伝承と結びつく重要な社のひとつで、土地の安穏・堤防や河川の氾濫防止、地域の安定といったご利益があるとされる。
土宮の特徴は”別宮の中で唯一、東向きに鎮座する社殿”という点だ。
外宮の御池にかかる亀石を渡った西側の杉木立の中にあり、神聖な伝統が守られた一帯には地域の歴史と信仰が色濃く残る。
落ち着いた佇まいからは、自然とともに生きる日本人の感性を感じられる。

4. 風宮
「風宮(かぜのみや)」は、級長津彦命と級長戸辺命をご祭神に祀る外宮の別宮。
2柱の神様は風雨を司り、農作物の成長に欠かせない風雨の災害を防ぐとともに、航海安全や国家安泰にご利益があるとされる。
もともとは「風社」と呼ばれていたが、元寇(1274年・1281年)の際に風日祈宮とともに神風を起こして日本を守った神威によって、1293年に別宮へ昇格した。
以降、外宮の祭祀体系の一部として風日祈の神事と深く結びついている。
杉林の中にひっそりと鎮座する小さな社は、自然の力を敬う日本人の伝統的価値観を感じられ、外宮参拝の中で落ち着いて願いを託すのにふさわしい。

5. せんぐう館
外宮のまがたま池のほとりに位置する「せんぐう館」は、伊勢神宮の「式年遷宮(しきねんせんぐう)」の意義や歴史をわかりやすく伝える博物館。
複数の展示エリアに分け、遷宮の目的・社殿の造営技術・職人の精密さなどを図解・実物模型・映像を使って体系的に紹介しているのが特徴だ。
一般の参拝者にも「なぜ20年ごとに造り替えるのか」が理解しやすい構成になっており、伊勢神宮の奥深さを身近に感じられる。
なかでも、見どころは実際の社殿を忠実に再現した「外宮正殿の原寸大模型」だ。
実寸に近いスケールで見ることで、普段は拝見できない唯一神明造の構造美を楽しめる。
また、神事・奉製に使われる道具や装束、神宝の展示も見応えがある。

伊勢神宮の正式な回り方
伊勢神宮の参拝時は、「外宮の正宮→外宮の別宮→内宮の正宮→内宮の別宮」の回り方が基本。
外宮の豊受大御神は、内宮の天照大御神に食事を供える御饌都神であり、礼儀として内宮に先立って感謝を捧げるというのが大きな理由だ。
これは「外宮先祭」と呼ばれる古くからの習わしなので忘れずに覚えておこう。
また、どちらも御朱印、お守りは参拝の最後にいただいてほしい。
神宮祭礼の伝統に則り正式な順序で参拝すれば、祈りがより深い意味を持ち、感謝を伝えることができる。
ちなみに「正宮」とは、伊勢神宮の中で最も中心的かつ格式が高い神社(=内宮・皇大神宮と外宮・豊受大神宮)を指し、正宮に次いで尊い神社を「別宮」と呼ぶ。

伊勢神宮を参拝するなら知っておきたい作法
伊勢神宮を参拝するうえで、知っておきたい作法を紹介していく。
これらは、古くより続く日本の神道文化への深い尊重と感謝の気持ちを表す大切な所作だ。
丁寧で心静かな参拝ができるため、しっかりと頭に入れて実践しよう。
また、神域に足を踏み入れる瞬間から神様への敬意を込めた行動を心がければ、参拝体験が一層豊かで意味深いものになる。
手水の作法
手水は身心を清めて、神様への敬意を表す大切な作法である。
手水舎では以下の順番で行ってほしい。
- 右手で柄杓(ひしゃく)を持って水を多めに汲み左手を清める
- 柄杓を左手に持ち替え右手を清める
- 再び柄杓を右手に戻し、左手で水を受けて口をすすぐ ※柄杓の縁に口を直接つけない
- もう一度左手を清め、残った水で柄を流して元の位置に戻す

参拝の作法
その他の神社と同様に伊勢神宮でも、参拝は以下のように「二拝二拍手一拝」で行う。
神聖な場所を意識した言動を心がけ、静かに感謝・おかげさまの心を込めてお参りをしてほしい。
- 神前に進んで姿勢を正し、腰を90度に折って深く2回お辞儀(二拝)
- 胸の高さで手を合わせて右手を少し下げてから、肩幅ほどに両手を広げて2回柏手(二拍手)
- 指先の位置を元に戻し、最後に深くお辞儀(一拝)

伊勢神宮で守るべきルールとマナー
伊勢神宮を参拝する際は静粛に振る舞い、他の参拝者の迷惑にならないように気を付けよう。
最低限守ってほしいルールとマナーは以下の通り。
- 外宮は左側通行、内宮は右側通行で歩く
- 神域内は禁煙(タバコは喫煙所で吸う)
- 神域内での飲食は避け、水分補給も休憩所でとる
- ペットを連れての参拝は不可(入口の衛士見張所へ預ける)
- 立入禁止箇所、保全エリアに入らない
- 撮影禁止の場所では写真、動画の撮影を控える
社ごとに異なる伊勢神宮の御朱印
伊勢神宮では、内宮・外宮および月読宮・瀧原宮・伊雑宮(いざわのみや)・倭姫宮・月夜見宮の計7社で異なる御朱印をいただける。
各御朱印は古くからの習わしで、篆書体(てんしょたい/古代文字)で記された「朱印(神社の印)と日付のみ」という簡素な様式が特徴だ。
他の神社のようなデザインやイラストは入っておらず、「参拝の証」としての本質を重んじた伊勢神宮ならではの格式を感じられる。
御朱印は内宮・外宮の「神楽殿授与所」、各宮社の「宿衛屋」で、参拝時間中に持参の御朱印帳などに授与(初穂料300円程度)している。

伊勢神宮でいただける8種類のお守り
お守りも御朱印と同様に、内宮・外宮の「神楽殿授与所」、月読宮・瀧原宮・伊雑宮・倭姫宮・月夜見宮の「宿衛屋」の7社で参拝時間内にいただける。
主に以下の8種類で、内宮と外宮で形や色が異なるのが特徴だ。
- 御守
- 健康、招福を祈願
- 交通安全御守(大・小)
- 交通安全、渡航安全を祈願
- 開運鈴守
- 清らかな鈴の音で開運を祈願
- 学業御守
- 学業成就を祈願
- 厄除御守
- 厄除け、災難除けを祈願
- 安産御守
- 安産を祈願
- 守祓(まもりはらい)
- 健康や幸福を祈願(お守りの中に納めてある小さなお神札)
- 海幸守
- 海上安全、大漁満足を祈願
伊勢神宮の代表的なお祭り
伊勢神宮におけるお祭りとは、神様に感謝と祈りを捧げる神聖な祭典・儀式を指す。
一般的にイメージするお神輿、山車(だし)が出る賑やかなものではなく、神職が主体となって厳かに執り行う格式高い神事が中心だ。
日本の伝統的な祭祀文化を現在も色濃く受け継いでおり、開催回数は神宮全体で年間1,500回にも及ぶ。
大きく「恒例祭」・「臨時祭」・「遷宮祭」の3種類に分類され、重要度や規模、季節・目的などによって内容が変わる。
その中でも特に有名なお祭りを紹介していこう。
1. 神嘗祭
「神嘗祭(かんなめさい)」は、伊勢神宮で最も古い由緒を持つ格式の高い重要なお祭り。
その年に実った新穀(新米)や様々な海山の恵みを天照大御神に奉り、自然と五穀豊穣への感謝をあらわす。
毎年10月15日から10月17日にかけて、外宮→内宮の順番で行うのがならわし。
神職たちが清浄な心と所作で神様に供え物を捧げる「由貴大御饌(ゆきおおみけ)」を中心に、祭礼作法に則って祝詞が奏上される。
祭典の主要部分は一般非公開だが、参拝時間内(5時〜17時)であれば見学が可能で、期間中は緊張感と静謐さが漂う参道に多くの参拝者が集まる。
日本人と深く結びついたお米・稲作文化、新穀への感謝を間近に体感できるのが魅力だ。

2. 神楽祭
「神楽祭(かぐらさい)」は、神恩(神様からの恵み)に感謝を捧げ、国民の平和や繁栄を祈る伝統的なお祭り。
毎年春(4月末〜5月頭)と秋(9月中旬・10月頭)の年2回開催され、新緑・秋空を背景に古代絵巻さながらの美しい舞台が大勢の参拝客を魅了する。
祭典では、平安時代から伝わる舞楽(ぶがく)に合わせて舞女・舞人が舞う姿のほか、全国の名家名流による能言・舞囃子といった奉納行事も楽しめる。
また、普段は非公開の茶室・庭園も開かれ、神聖な雰囲気の中で日本古来の文化・粋を存分に感じられるのが魅力だ。
格式の高い祭祀ながら一般人にも親しみやすさがあり、内宮神苑の特設舞台で自由に見学できる。

3. 観月会
「観月会(かんげつかい)」は、中秋の名月(10月初旬・1年で最も美しい月)の夜に行う雅な催し。
神宮大宮司・冷泉為紀(れいぜいためもと)が伝えた冷泉流の作法に基づき、1898年に始まった「観月歌会」を起源に持つ。
当日は外宮・まがたま池を奉納舞台に、全国から集まった短歌・俳句の秀作を神宮の楽師が古式の作法で披講(読み上げ)後、管絃や舞楽が奏行される。
生演奏・満月の光・神域の静けさが一帯に溶け込み、参加者および観覧者にしばし現世を離れた神秘的な時間を提供する。
さらに、舞台に広がる夜景(池に映る光・秋の気配)が重なり、格調高い風情とともに文化・伝統の深さを味わえるのが魅力だ。※一般公開・自由に見学可

伊勢神宮を参拝するなら知っておきたい豆知識
2,000年以上の歴史を持つ伊勢神宮には、一般的な神社とは異なる点や、様々な伝承・迷信がある。
ここでは、頭に入れておくとさらに楽しめる5つの豆知識を紹介しよう。
いずれも比較的有名なものだが、その内容や背景まで知っている人は少ない。
日本の歴史、伝統との関係も深いので、参拝前後に友人・家族とシェアするのもお勧めだ。
20年に一度開催される「式年遷宮」
「式年遷宮」は、伊勢神宮で20年ごとに行われる日本で最大のお祭り。
社殿・神宝をすべて造り替えて、大御神を新宮にお遷りいただくもので、第1回の690年から第62回の2013年まで1,300年以上続いている。
800種・1,600点もの御装束神宝(祭祀用の衣装・道具)も新たに作られ、職人たちが古来の技術を継承しながら制作にあたる。
単なる建築の更新ではなく、神聖さの再生と信仰の継承を意味し、国の繁栄や皇室の安泰を祈願するという社会的意義も持つ。
本番までの準備に8年余りの年月がかかり、その間にも「山口際」・「御船代祭」といった様々なお祭り・伝統行事を段階的に行って盛り上がる。
次の第63回は2033年に開催予定だ。

1,500年以上、毎日行われる「日別朝夕大御饌祭」
「日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)」は、内宮・外宮・別宮で毎日、朝と夕の2度行われる御饌(みけ/神様に供える食事)のお祭り。
外宮の御鎮座以来、1日も欠かすことなく、1,500年以上続けられてきた習俗で、神々に日々の感謝を捧げながら「国安かれ、民安かれ」を祈る重要な神事だ。
祭典は早朝、前夜から籠もって心身を清めた神職が忌火屋殿(いみびやでん)で調理し、神域内の清らかな水を使って食事を準備する。
御饌殿にて米や酒、旬の海山の幸・野菜をお供え、禰宜(ねぎ)が祝詞を奏上し八度拝の拝礼を行う。
基本的に非公開だが、外宮の北御門付近では、神饌を御饌殿へ運ぶ様子などを見学できる場合がある。

正宮では個人的なお願い事を避けよう
正宮は、古くより天照大御神に感謝を捧げる場所で、個人のお願いごとはNGではないものの別の場所で行うのが礼儀だ。
伊勢神宮では「私幣禁断(しへいきんだん)」という考え方があり、天皇以外の個人が直接神様に供物やお金を捧げることは控えるべきとされている。
お賽銭を投げ入れる行為自体も神域を汚す恐れから、正宮には賽銭箱も置かれていない。
したがって、正宮では感謝の気持ちを中心に心静かに参拝し、個人的なお願いごとは別宮(内宮の荒祭宮・外宮の多賀宮など)でしよう。

伊勢神宮におみくじがない理由
伊勢神宮には昔から「おみくじ」が置かれていない。
“お伊勢参りができるあなたは既に大吉”という言葉があるように、参拝行為自体が大吉であり、神様の御加護を受ける幸運とされているのが主な理由だ。
また、日本の総氏神・天照大御神を祀る伊勢神宮では、個人の運勢を吉凶で占い、その結果で一喜一憂するおみくじは本来の信仰観、参拝目的と異なる。
そもそも創建時はおみくじの慣習が日本になく、古来からの祭儀や礼法、神聖さを守るという側面も持つ。

伊勢神宮に古くから伝わる迷信
伊勢神宮は「夫婦やカップルで行かない方がいい」と言われている。
その理由は諸説あるが、次の2つが代表的なものとして有名だ。
1つ目は、伊勢神宮のご祭神・天照大御神は女性の神様で、参拝に訪れた夫婦やカップルの仲の良さに嫉妬し、別れさせるという説。
2つ目は、江戸時代に伊勢神宮の近くに古市遊郭(歓楽街)があり、参拝に来た男性が遊びに行きやすくするために、この噂を口実に使ったという説。
ただし、どちらも俗説に過ぎず、公式な根拠・信ぴょう性はない。
むしろ正しい作法で参拝すれば、夫婦円満や良縁を祈願できるので迷信と考えて良いだろう。

伊勢神宮と合わせて訪れてほしい「おはらい町・おかげ横丁」
伊勢神宮を参拝するなら、内宮から徒歩約5分の参道沿いにある「おはらい町」にも立ち寄ろう。
宇治橋から約800m続く石畳の通りで、伝統的な切妻・妻入り様式の建物が建ち並び、昔懐かしい風情を感じられる。
おはらい町の中程には、江戸期〜明治期の建築物を再現した「おはらい横丁」が広がる。
飲食店・お土産店のほか季節行事・伝統芸能も行われ、”伊勢らしさ”を存分に楽しめるのが魅力。
個性的なグルメも非常に多いので、食べ歩きしながらの散策がお勧め。
特におはらい町の顔とも言える名物和菓子「赤福餅」、コシの強い極太麺が特徴の「伊勢うどん」は行列ができるほど人気だ。
詳細をまとめた、こちらの記事も併せて読んでほしい。

伊勢神宮と縁の深い3つの神社
三重には神聖な雰囲気と様々なご利益を持った神社が点在する。
ここでは、伊勢神宮と縁が深く、特別なご加護を授かれる神社を3つ紹介しよう。
いずれも「道開き」・「導き」・「ご縁」など、人生や物事のスタートを守る神々を祀っているので、伊勢神宮と併せて参拝してほしい。
1. 猿田彦神社
物事がはじまる時に出現し、すべてをよい方向に導いてくれるという神様、猿田彦大神を祀っている。
古事記や日本書紀にも「国初のみぎり天孫をこの国土に啓行(みちひらき)になられた」と伝えられており、絵馬にも願いをよい方向に導く猿田彦神社独自の「みちびきの舞」が描かれている。
伊勢神宮との関係も深く、猿田彦大神の裔である大田命が、伊勢神宮内宮の地として、五十鈴川の川上を勧めた。

2. 多度大社
古来、神体山として信仰を集めてきた多度山の麓に鎮座。
5世紀後半、雄略天皇の御代に社殿が創建された。
本宮に伊勢神宮の御祭神である天照大御神の第3皇子、天津彦根命を祀り、別宮に孫神にあたる天目一箇命を祀る。
この為、伊勢神宮との関係が深く、「お伊勢参らば お多度もかけよ、お多度かけねば片参り」と謡われ、伊勢参宮の際には多度大社にも参拝する習慣がある。

3. 二見興玉神社
御祭神に猿田彦大神を祀り、縁結びや夫婦円満、交通安全などにご利益があるとされる神社。
古来から伊勢神宮参拝の前に二見浦の海水で禊をする「浜参宮」という習わしがあり、多くの人が汐水を浴び心身を清めていた。
現在では海に入らなくても、同社で「無垢塩祓(むくしおばらい)」を受けることで禊の代わりになるとされている。
二見興玉神社を参拝したのちに、清らかな気持ちで神宮を参拝するのが理想的なプランだ。

伊勢と伊勢神宮を満喫できる1Dayモデルコース
初めて伊勢神宮を訪れると、「どの順番で回ればいいの?」と迷う人も多い。
実は、古くからの正式な参拝順序は「二見興玉神社→外宮→内宮」。
この順番で巡ると、心身を清め、神様に感謝を伝える流れを体験できる。
ここでは、参拝と食べ歩き、さらに周辺の神社や町歩きまで楽しめる、1日で伊勢を満喫できるモデルコースを紹介する。
- 8:30
- 二見興玉神社を参拝し、「無垢塩草」をいただく
- 9:30
- 外宮エリアを正宮→多賀宮→土宮→風宮の順に参拝
- 11:30
- 内宮エリアを宇治橋→正宮→荒祭宮→風日祈宮 の順に参拝
- 13:30
- おはらい町・おかげ横丁で昼食&食べ歩き
- 14:50
- 猿田彦神社を参拝
- 16:00
- 河崎本通りを散策
伊勢神宮の口コミ
伊勢神宮に関するよくある質問
Q
伊勢神宮に祀られている神様は?
内宮の「天照大御神」、外宮の「豊受大御神」を中心に、伊勢神宮全体では151柱もの神様がご祭神に祀られています。
Q
伊勢神宮のご利益は?
内宮は「強い開運と厄除け、心の平和」、外宮は「衣食住、産業の守護」など、参拝によって様々なご利益が得られるとされています。
Q
伊勢神宮の正しい回り方を教えて
「外宮の正宮→外宮の別宮→内宮の正宮→内宮の別宮」が正式な参拝順序です。
まとめ
日本文化・精神性を象徴する「伊勢神宮」の概要や見どころ、参拝における作法など、幅広く紹介してきた。
格式の高さだけでなく、静謐な自然の中で心を清め、穏やかな時間を過ごせるのも特徴だ。
歴史が息づく伊勢神宮は日本人にとって特別な存在であり、一生に一度は訪れるべき場所と言えるだろう。
伊勢市には他にも魅力的なスポットが多いので、詳細をまとめたこちらの記事も読んで旅行プランを立ててほしい。






