日本の伝統文化・芸術の世界へ!盆栽の楽しみ方

日本の伝統文化・芸術の世界へ!盆栽の楽しみ方

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筆者 : GOOD LUCK TRIP

日本独自の美学を反映した盆栽は、自然を身近に感じられる素晴らしい芸術のひとつだ。
現代では国内のみならず、世界中で楽しむ人が広がっており、高い注目と人気を集めている。
この記事では盆栽の歴史と種類、鑑賞のポイントや入手方法を中心に、盆栽を楽しむ上で知っておくべき内容を紹介していく。
盆栽への興味・関心が増すとともに、日本文化の理解も深まっていくので、ぜひ最後まで読んでほしい。

完成のない生きた芸術「盆栽」

盆栽は、日本語でそれぞれ「盆=おぼん(鉢)」・「栽=木・植物」を表し、繋げると”容器に入った木”という意味を持つ。
植物を育てながら自然の美しさを求める趣味であり、日本の伝統的な文化であり芸術のひとつだ。
鉢の中で土・砂・植物・石などを調和させて、自然の風景や樹木の形を再現する。
その根底には、日本人らしいきめ細やかさ・美的感覚が表現されており、芸術的で非常に奥深い。
単に植物を育てる鉢植えとは一線を画すと言えるだろう。
盆栽の最大の魅力は、長い年月をかけてじっくりと育て、自分好みの姿に仕上げていくことだ。
時間の流れとともに成長する過程を楽しめ、自然との対話や一体感を味わいつつ見守る喜びを与えてくれる。
形作り・手入れ・花や実の変化も季節の移ろいを感じられて面白い。
このように植物が成長する過程を楽しむことから、「完成することのない生きた芸術」とも呼ばれている。
現代の日本人にとって盆栽は単なる趣味にとどまらず、精神的な安定を与える存在になっている。
忙しい日常の中で盆栽を通じて自然と触れ合い、心を落ち着ける時間を持てるため、興味を持つ人も多い。
また世界各国でも人気を集め、特に欧米では日本文化への関心の高まりとともに愛好者が増加中だ。

鉢という人工的な空間の中で自然を育むのが盆栽の魅力のひとつ
鉢という人工的な空間の中で自然を育むのが盆栽の魅力のひとつ

盆栽の起源と歴史

日本の伝統文化である盆栽は、今や世界中から愛される存在になった。
そんな盆栽がどのような起源を持ち、日本でどのように発展を遂げていったのか、起源と歴史を紹介していこう。

盆栽の起源と日本への伝播

盆栽の起源は、約1,200年前~1,300年前に唐代(618年~907年/現在の中国)で生まれた「盆景(ぼんけい)」・「盆山(ぼんさん)」だと言われている。
唐代の遺跡「章懐太子李賢墓壁画」に、「盆景」を捧げる従者の記録があることがその理由のひとつ。
経済が発展した唐代では芸術面でも繁栄を迎え、自然の風景を小さな鉢の中に再現した「盆景」・「盆山」を楽しんでいたようだ。
日本には平安時代(794年~1185年)に伝わり初めは宮廷や貴族の間で広まると、芸術や儀式的な役割を果たし徐々に発展を遂げていく。

唐代に栄えた盆景・盆山が日本へ渡来
唐代に栄えた盆景・盆山が日本へ渡来

日本における盆栽の発展

鎌倉時代(1185年~1333年)に入ると、禅宗の影響および武士階級の台頭で盆栽は士族にも広まった。
当時の「西行物語絵巻」・「春日権現験記絵」などの絵巻にも「盆景」が描かれている。
室町時代(1336~1573年)~江戸時代(1603~1868年)初期は将軍・大名の庭園でしか見られなかったが、後期以降は庶民の間にも浸透し身近な存在になる。
技術・美的価値が発展して多くの盆栽愛好家が生まれると、展示会や市場も開かれ、今日の盆栽に通じる文化を確立した。

盆景・盆山から変化し日本文化の盆栽へ
盆景・盆山から変化し日本文化の盆栽へ

明治時代~現代の盆栽と世界への広がり

近代化が急速に進んだ明治時代(1868年〜1912年)以降はさらに発展し、日本の伝統文化として国際的な評価が高まると、海外の博覧会や展示会にも出品されるようになった。
なかでも1970年の大阪万博をきっかけに、盆栽は世界中から注目を集めて認知度が高まる。
「Bonsai」という言葉が共通言語となった現代では日本だけでなく、アメリカ・ヨーロッパなど各国で愛されている。
小さな鉢の中で自然美を表現する面白さは国籍を問わず、盆栽を通じて日本文化を楽しみたいと考える外国人も多いようだ。

盆栽が世界から注目を集めるきっかけとなった「EXPO70・大阪万博」
盆栽が世界から注目を集めるきっかけとなった「EXPO70・大阪万博」

盆栽が日本文化に与えた影響

盆栽は単なる植物の栽培や装飾という枠を超え、日本文化に多大な影響を与えてきた。
日本人が持つ美意識や価値観をはじめ、様々な分野にその精神が反映されている。
例えば、自然との共生や四季を大切にする自然観、時間の経過による変化・静寂を楽しむ「詫び寂び」が代表例だ。
また盆栽が持つ芸術性は庭園設計・建築のみならず、茶道や花道といった他の伝統文化の発展にも寄与した。
これからも歴史と精神性を守りながら、我々の日常生活に癒しをもたらし続けてくれるだろう。

日本庭園にも大きな影響を与えた盆栽
日本庭園にも大きな影響を与えた盆栽

楽しむために知っておきたい盆栽の基本的な種類と分類

盆栽を楽しむためには、まず基本となる種類を知ることが大切だ。
一般的に樹木の種類・サイズ・樹の形の観点から分類されており、それぞれに異なる特徴がある。
ここから順番に説明するので、内容を参考にしてほしい。

樹木の種類

樹木は「松柏(しょうはく)」・「葉物(はもの)」・「花物(はなもの)」・「実物(みもの)」の大きく4種類に分けられる。
それぞれに異なる魅力があり、これらの違いを知ることで盆栽の楽しみ方(鑑賞・育てる)がより深まる。
種類ごとに特徴を紹介するので、自分の好みの樹木を探してみよう。

1. 松柏(しょうはく)

「松柏」は常緑樹である松や柏の木をメインにした盆栽の代表格。
盆栽と聞いて初めに思い浮かべるものと表現すれば伝わるだろう。
幹や根が丈夫で力強い樹木が多いため、多様な気候・環境の中でも育ち、比較的扱いやすいことから初心者向きと言われている。
また寿命が長く、他の樹種に比べて成長が遅いので、木の形成を自分好みにコントロールできる。
一年中葉の色は緑色で変わらず、風格を感じさせる樹形は美しくてずっと見ていても飽きない。
四季を通じてちょっとした変化を楽しめるのが魅力だ。
※代表的な樹種:黒松、赤松、真柏(しんぱく)、ヒノキなど

盆栽といえば誰もが真っ先に思い浮かべる松柏
盆栽といえば誰もが真っ先に思い浮かべる松柏

2. 葉物(はもの)

「葉物」は主に落葉樹を使った盆栽。
「松柏」と異なり、四季の移り変わりに合わせて葉の色や形の変化を楽しめるのが最大の魅力。
春に新芽が出て、夏には柔らかな緑に深まり、秋になると鮮やかな紅葉に色づき、冬に葉が落ちるといった味わい深い過程を1年通して観察できる。
特に赤・黄色に染まった紅葉が美しく、秋の風物詩としても人気が高い。
また、葉が全部落ちた後の裸樹は趣があって、日本らしい「侘び寂び」を感じさせる。
※代表的な樹種:モミジ・カエデ・ケヤキ・ブナなど

紅葉の美しさを自分で育める葉物
紅葉の美しさを自分で育める葉物

3. 花物(はなもの)

「花物」はその名の通り花を咲かせる盆栽。
可憐で華やかな姿を見せる開花時期が最大の見どころで、その美しさに心を奪われる人が多い。
樹種によって開花時期が変わるため、四季折々の花を咲かせることも可能だ。
植物ごとに異なる花の形や色合い、香りを楽しめるのも魅力のひとつ。
また、育てる過程も大切で、花が咲いた時には一層の愛着と達成感が湧くのも特徴だ。
※代表的な樹種:桜・梅・ツバキ・ツツジなど

長い月日をかけて育てた盆栽が花咲く時の喜びはひとしおだ
長い月日をかけて育てた盆栽が花咲く時の喜びはひとしおだ

4. 実物(みもの)

「実物」は実を楽しむための盆栽で、観賞用の実や食用の実をつける植物が多い。
実が成熟する過程も見られ、「花物」と同様に季節ごとの変化を感じながら育てられる。
一般的に秋から冬にかけて果実がなり、全体が赤やオレンジなどに色づくと、一層鮮やかで美しい印象を与える。
実際に食べられる種類もあり、鑑賞以外の楽しみ方を持つのも特徴だ。
※代表的な樹種:ヤブコウジ・ヒメリンゴ・カリン・ズミなど

実のついた盆栽は一際目を引く
実のついた盆栽は一際目を引く

樹形の種類

樹木だけでなく、樹形の種類によっても様々な特徴や魅力がある。
これらの違いを理解すれば、自分好みの盆栽を見つけやすくなる。
また同じ樹種でも形状・表情の違いがわかるので、鑑賞時や育てる時の楽しみが増すだろう。
ここでは、樹形の中でも基本的な6つのタイプを紹介する。

1. 直幹(ちょっかん)

「直幹(ちょっかん)」とは、幹がまっすぐに直立し、上に向かって垂直に伸びる樹形を指す。
盆栽における最も基本的な樹形で、枝は前後左右にバランス良く配置され、幹は下から上にかけて細くなるのが特徴。
力強さや厳格さを感じさせる堂々とそそり立つ姿は、自然界でも見られる正統派の美しさが魅力だ。
また非常にシンプルながら、木の成長過程や重厚感を楽しめるので見ごたえがある。
※向いている盆栽:杉・ヒノキ・黒松・桜など

正統派の美しさを誇る直幹の盆栽
正統派の美しさを誇る直幹の盆栽

2. 斜幹(しゃかん)

「斜幹(しゃかん)」とは、幹が斜めに傾きながら伸びる(倒れ掛かるように伸びた)樹形を指す。
自然の風景に見られる風倒木、風・雪に耐えて育つ樹木を模した形が特徴だ。
「直幹」がまっすぐな姿勢を強調するのに対し、「斜幹」は動きや曲線を感じさせるので、躍動的な印象を与える。
幹の傾斜・枝や葉が伸びる方向によって、変わる風格・表情も魅力のひとつ。
「斜幹」の盆栽は生命力としなやかさを表現できるため、個性的なデザインを好む方に人気が高い。
※向いている盆栽:黒松・柳・ヒノキ・カエデなど

強い生命力を感じさせる斜幹の盆栽
強い生命力を感じさせる斜幹の盆栽

3. 寄せ植え

「寄せ植え」とは、複数の樹木を同じ鉢に植え、調和を取った樹形を指す。
一般的に主幹となる木を左右のどちらかに配置し、周りに大小の樹を植えていく。
樹木が互いに引き立て合い、まるで小さな森林を表現するような美しさが特徴だ。
異なる樹木を組み合わせれば、色や形・葉の質感といった様々なバリエーションを楽しめる。
デザイン次第では立体感・奥行きも生まれ、多彩な表情を見せるのも魅力的。
ただし、手入れが複雑で全体のバランスを取るのが難しい。
※向いている盆栽:ブナ・杉・松・石化ヒノキなど

松竹梅を植えた寄せ植えの盆栽
松竹梅を植えた寄せ植えの盆栽

4. 模様木

「模様木」とは、幹・枝に自然な模様や模様状の変化が現れる樹形を指す。
うねり・S字曲線・ひび割れ・苔むした表面などの特徴的な模様が見られ、その独特の質感が鑑賞のポイントだ。
これらは長い年月をかけて自然にできたものが多く、木肌の美しさや歴史を感じさせる風合いにも魅力があふれる。
自然に生えている樹木はほとんどが「模様木」なので、馴染みがあるかもしれない。
※向いている盆栽:直立性の植物を除いたほぼ全般の樹種

樹木の表面の美しさを強く感じられる模様木の盆栽
樹木の表面の美しさを強く感じられる模様木の盆栽

5. 吹き流し

「吹き流し」とは、幹や枝が一方向にだけ傾いてなびくように成長する樹形を指す。
幹は細く、曲線を描きながら傾き、枝が均等に広がることで自然な流れを表現しているのが特徴だ。
特に枝葉が風に揺れる様子が優雅で、柔らかな動きのある盆栽として愛されている。
「斜幹」と間違えやすいが、「吹き流し」は枝が全て一方向という点で異なる。
※向いている盆栽:松柏類をはじめとするほぼ全般の樹種(直立性の植物を除く)

風に吹かれたような形状となる吹き流しの盆栽
風に吹かれたような形状となる吹き流しの盆栽

6. 箒立ち(箒作り)

「箒立ち(箒作り)」とは、幹が直立し、箒(ほうき)のように枝が均等に広がった樹形を指す。
まっすぐに立ち上がった根本は、途中から四方に枝が分かれ半円形の樹冠をしている。
全体にバランスのとれた美しいシルエットが特徴で、上品で落ち着いた印象を与えるのが魅力だ。
※向いている盆栽:ケヤキ

冬の裸木も見応えがある箒立ちの盆栽
冬の裸木も見応えがある箒立ちの盆栽

盆栽の大きさの分類

盆栽は大きさによっても分類されており、主に「大品(だいひん)盆栽」・「中品(ちゅうひん)盆栽」・「小品(しょうひん)盆栽」の3つに分かれる。
それぞれのサイズ感は以下の表の通りで、「小品盆栽」より下回るものは「ミニ盆栽」、さらに小さな盆栽は「プチ盆栽」・「豆盆栽」などと呼ばれる。
ただし明確な定義はなく、樹形やボリュームでも解釈が異なると覚えておこう。
一般的に大きい方が高額かつ手入れが大変で、小さい方が安価で扱いやすい。
そのため、初心者は「ミニ盆栽」以下から始めるのがお勧めだ。

大品(だいひん)盆栽
60cm以上
中品(ちゅうひん)盆栽
35cm〜60cm
小品(しょうひん)盆栽
15cm〜20cm
ミニ盆栽
約10cm

盆栽を鑑賞する6つのポイント

盆栽を楽しむために知っておきたい6つの鑑賞ポイントを紹介しよう。
これらを抑えれば単に見て美しいと感じるだけでなく、なぜその形が美しいのか、どうしてそのバランスが重要なのかといった本質を理解できる。
さらに、見るたびに新たな発見があり、鑑賞がより深いものになるだろう。
また良し悪しを判断する力が養われ、他の人との会話などを通じて、多くの知識が手に入るのもメリットだ。

1. 根張り

「根張り」とは、土の表面より外に出て見えている樹木の基盤となる部分を指す。
盆栽の美観・風格・成長に影響を与える非常に重要な要素で、鑑賞する時は一番に注目してほしい場所だ。
「根張り」が美しいと、木全体の安定性と健康を支えバランスの良い姿を作り上げる。
根が鉢全体に均等に広がっていることが理想で、あらゆる方向に根が伸びる「八方根張り」の状態が最も望ましい。
その他、太さ(幹に近い部分の根が太いと良い)・健康状態(黒ずみなどはないか)・配置と露出(根が自然な形で適度に出ているか)をポイントに見よう。

盆栽を鑑賞する際は土の表面から見える根から見てみよう
盆栽を鑑賞する際は土の表面から見える根から見てみよう

2. 幹の立ち上がり

「幹の立ち上がり」とは、根元から最初の枝までの幹が最もよく見える部分を指す。
盆栽の美しさを引き立てる重要な要素で、木の個性・成長の歴史を表現している。
直線的で力強く、または自然な曲線を描きながらしっかりと立ち上がっていれば理想的と言える。
幹の根元がしっかりと太くて安定感があると、全体のバランスが取れて見栄えが整いやすい。
また、表面の質感と模様(ひび割れの有無・好み)・高さが適切かどうかもチェックポイントだ。

根元から上に向かって鑑賞していこう
根元から上に向かって鑑賞していこう

3. 枝ぶり

「枝ぶり」とは、幹から伸びる枝と配置(どこにどのような枝が出ているか)や隙間などの枝全体の張り具合を指す。
盆栽の形を整えるための重要な手入れのひとつで、樹木の成長をコントロールし、美しい樹形を作り出す役割を果たしている。
大きな枝がバランスよく配され、「忌み枝(不要な枝)」の無い状態が最も理想的で価値が高い。
また葉が落ちた冬は、細かく分かれた枝先が見どころになる。

美しい盆栽を作るためには日々の手入れが重要だ
美しい盆栽を作るためには日々の手入れが重要だ

4. 葉

葉は幹とともに盆栽の印象を大きく左右する要素である。
形・色・サイズ・出方・密度といった全てが重要で、樹形を引き立てて調和をもたらす葉が理想的だ。
なお、葉の色は健康状態を反映しており、緑が鮮やかであれば元気な証拠、黄変やしおれが見られる場合は病気や水分不足の兆しと言える。
葉はもともとの性質が改善しづらいので、樹木を選ぶ際は細心の注意が払おう。
また同じ樹種でも、葉には季節ごとの変化や個性があり、育てる楽しみも与えてくれる。

樹木の種類によっては紅葉するため、盆栽から小さな季節を感じられる
樹木の種類によっては紅葉するため、盆栽から小さな季節を感じられる

5. ジン・シャリ

「ジン・シャリ」とは、枝(ジン/神)や幹(シャリ/舎利)の一部が枯れて白骨化した部分を指す。
自然の風化や歳月を表現する重要な要素で、そのままの形を残すことで古木のような風情をもたらす。
他の部分との調和を取りながら、盆栽に歴史や重みを与え、木の個性を引き立てる役割を担う。
適切に管理されていると人工さがなく、より自然な風景が感じられる。
松柏類に多く見られ、緑色の葉と美しいコントラストが大きな見どころだ。

枯れているからこその美しさを誇る
枯れているからこその美しさを誇る

6. 表と裏

盆栽には最も美しく見える面の「表」とその反対側の「裏」がある。
表面は葉や枝の配置・根張り・幹の立ち上がりなどがバランスよく配置され、樹木の力強さが際立つように作られるのが特徴。
裏面には奥行きや空間を持たせるといった細かい工夫が施され、表と裏できちんと役割が機能すると調和の取れた姿となる。
なお現在は表と裏の区別が曖昧になっており、違いがはっきりしない盆栽も多い。
しかし、優れた盆栽はどの角度から見ても自然で綺麗な造形が楽しめるので、視点を変えて鑑賞してみよう。

正面だけでなく様々な角度から盆栽を鑑賞してみよう
正面だけでなく様々な角度から盆栽を鑑賞してみよう

盆栽の購入方法と国外への持ち出し

盆栽は日本各地の様々な場所で購入できる。
最も定番なのは、数多くの種類を取り扱い、精通するプロに相談しながら選べる盆栽専門店(盆栽園)。
手軽さを求める場合は、初心者向けの盆栽が揃う園芸店・ホームセンターがお勧め。
その他、オンラインショップ、展示会・イベントなどでも販売している。
なお、訪日観光客で母国に持ち帰りを検討中の方は注意が必要だ。
盆栽を日本から海外へ飛行機で運ぶことは可能だが、専門家レベルの知識が求められる各国の検疫条件・審査・規制などをクリアしなければならない。
非常にハードルが高いので、個人での対応は難しいと考えた方が良いだろう。

残念ながら海外への持ち出しは難しいため展示会などで楽しもう
残念ながら海外への持ち出しは難しいため展示会などで楽しもう

盆栽を育てる基本的なポイント

今後自宅で盆栽を始めようと考えている方に向けて、育て方のポイントを表にまとめて紹介する。
最初は五葉松や長寿梅など手入れが簡単な樹種から始めて、少しずつ経験を積みながら学んでいくのがお勧めだ。

育てる際に必要な道具
じょうろ(霧吹き)、はさみ、ピンセット、竹ぐし、針金、有機肥料、鉢、園芸用の薬剤など
置き場所
直射日光を避けた、日当たりと風通しの良い屋外の場所で管理する。※夏の猛暑、冬の極寒の日は室内に移動させる
水のやり方(タイミング)
土の表面が乾燥したタイミングを見て、春と秋は1日1回、夏は1日2回、冬は2日に1回を目安に与える。
(葉や枝に水がかからないように注意)
肥料の与え方
4~11月に規定量を守って与える。(数ヶ月で溶け込けるので都度追加する)
剪定(せんてい)作業
定期的に不要な枝や芽を取り除き樹形を整える。
植え替え
樹木の成長に合わせて、1~2年に1回新しい鉢に植え替える。
病害虫の対策
定期的に消毒しつつ、葉や根の状態を見て病気や虫の兆候がないか確認する。

タイミングが合えば訪れてほしい「国風盆栽展」

「国風盆栽展」とは、毎年2月の上旬と中旬に東京都美術館で開催される日本最大の盆栽展。
80年以上の歴史を持ち、2026年に第100回を迎える格調の高い展示会で、盆栽芸術の向上および日本の伝統文化の発展を目的としている。
会場には国内外から多くの人が集まり、厳しい審査で選ばれた愛好家たちの自慢の作品が並ぶ。
その中から美しさや状態などの審査が行われ、最も優れたものには盆栽界で最も権威のある「国風賞」が送られる。
また、育て方・手入れ方法に関するセミナーや販売コーナーもあり、初心者でも学びながら楽しめるのが魅力だ。
日本の風土に根ざした盆栽の世界を深く知れるので、機会があればぜひ参加しよう。

JR上野駅から徒歩7分の東京都美術館で開催される
JR上野駅から徒歩7分の東京都美術館で開催される

盆栽に興味がある方に訪れてほしい3つのスポット

最後に日本の盆栽に興味を持った方に訪れてほしい3つのスポットを紹介しよう。
いずれも多彩で見ごたえ抜群の盆栽を展示する有名な場所で、匠の技術が光る美しいコレクションを堪能できる。
東京駅から1時間以内とアクセスしやすいのもうれしいポイント。

1. さいたま市大宮盆栽美術館

盆栽の名品、優品を展示する世界初の公立の盆栽美術館。
盆栽用の植木鉢である盆器や、一般には水石と呼ばれる鑑賞石、盆栽が描かれている浮世絵などの絵画作品、それに盆栽に関わる各種の歴史・民俗資料などを系統的に収集し公開している。
美術館に隣接する大宮盆栽村(さいたま市北区盆栽町)は、名品盆栽の聖地として知られ、日本だけでなく世界から多くの愛好家が訪れている。

世界の「BONSAI」を堪能できる美術館
世界の「BONSAI」を堪能できる美術館

2. 大宮盆栽村

2025年に創設100周年を迎える日本屈指の盆栽郷。
住所(埼玉県さいたま市北区盆栽町)にも盆栽の名前が入っており、日本だけでなく世界から多くの愛好家が足を運ぶ盆栽の聖地だ。
現在は6つの盆栽園があり、それぞれに園主の技術と美意識によって手掛けられた個性豊かなこだわりの盆栽を鑑賞できる。
例えば「九霞園(きゅうかえん)」では自然本来の姿を引き出す盆栽を、「清香園」では伝統の技を受け継いだ盆栽を楽しめるのが特徴。
販売とともに盆栽教室を行う園もあるので、各園を訪ねてその魅力を肌で感じてほしい。
盆栽村に隣接するさいたま市大宮盆栽美術館(さいたま市北区土呂町)は、世界初の公立盆栽美術館として知られ、盆栽に関わる資料を系統的にまとめている。

日本屈指の盆栽の聖地には世界中から盆栽ファンが訪れる
日本屈指の盆栽の聖地には世界中から盆栽ファンが訪れる

3. 春花園BONSAI美術館

国内外で盆栽文化の普及・伝承を行う盆栽作家・小林國雄氏が開館した盆栽の美術館。
最寄りの小岩駅からバスで18分の閑静な住宅街にあり、隠れ家のような雰囲気の中で盆栽の魅力にふれられる。
盆栽のコレクションは日本庭園や数寄屋建築の家屋に配置されており、その数は1,000鉢以上。なかには樹齢1000年を超える貴重な作品もあって見ごたえたっぷりだ。

世界的な盆栽作家・小林國雄氏が創設した盆栽の美術館
世界的な盆栽作家・小林國雄氏が創設した盆栽の美術館

盆栽に関するよくある質問

Q

日本の盆栽は海外に輸出されているの?

A

日本および諸外国の検疫条件や審査などをクリアした盆栽のみ輸出されています。非常にハードルが高く、相応の知識も必要なので一般人の持ち帰りは難しいとお考えください。

Q

盆栽を育てるのにお金はかかる?

A

樹種・盆栽の大きさ・育て方などによって変わります。初心者は3,000円~10,000円で始める人が多いです。

Q

桜や紅葉の盆栽もあるって聞いたけど、本当?

A

桜の盆栽・もみじの盆栽ともにあります。いずれも種類が多く、色鮮やかな花や葉から季節を感じられる人気の盆栽のひとつです。

まとめ

この記事では盆栽の歴史と種類を中心に、見る時・育て方のポイントについて紹介してきた。
盆栽の世界はとても奥深く、鑑賞および育成を通じて日本の美意識や自然観に触れられる。
実際に育てて見るとどんどん愛着が湧き、魅力に引き込まれていくので、興味がある人はこれを機にチャレンジしよう。
また日本に旅行で訪れる際は、展示会・イベント・盆栽専門店に行くプランを計画し盆栽を肌で楽しんでほしい。