風情あるのれんを目印に、東京・八王子にある創業100年以上の老舗をめぐる

風情あるのれんを目印に、東京・八王子にある創業100年以上の老舗をめぐる

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筆者 : GOOD LUCK TRIP

高尾山山麓の高尾山口駅から電車で15分ほどの距離にある八王子駅。
山との近さを感じさせないほどに発展した都会的な町並みだが、少し歩くスピードを落として散歩してみよう。だんだんと日本の昔ながらの風情がきっと見えてくるはずだ。

八王子はかつて織物で栄えた町。養蚕が盛んで蚕のエサとなる桑の畑が広がっていたことから、町は「桑都(そうと)」と呼ばれていたという。絹産業の発展とともに人とお金が集まり、やがて華やかな文化が花開く。例えば、踊りや三味線などの伝統文化でお座敷を盛り上げる八王子芸妓衆や、人形劇の「八王子車人形」、お祭りで姿を現す大きな山車など、現在もなお、こうした文化が息づいている。

より江戸情趣が感じられる町並みに

最近では、この文化を未来へと確かに受け継いでいくプロジェクト「八王子桑都千景」がはじまり、町歩きがさらに面白くなった。

八王子の楽しみ方をひとつ提案する。それは、老舗めぐりだ。目印は、藍染めの「のれん」。
藍染めは、日本において1000年以上の歴史を持つ伝統技法だ。19世紀に鎖国が解かれた後、日本を訪れた外国人たちは、街中で見かける藍染めの衣服やのれんに強い印象を受けたという。そして、日本文化に溶け込んだ深い青の色合いを見て、彼らはこの色を「ジャパンブルー」と呼ぶようになった。

歴史ある約80店舗の店先には、屋号の入った「ジャパンブルー」ののれんが掛けられており、歴史ある専門店を見つけやすくなった。
そのなかからぜひ、訪れたい2つのお店を紹介する。

老舗の目印となる藍染めの「のれん」
老舗の目印となる藍染めの「のれん」
呉服屋さんの店頭に飾られた大きなのれんは目を引く
呉服屋さんの店頭に飾られた大きなのれんは目を引く
お店によってさまざまなタイプののれんがある
お店によってさまざまなタイプののれんがある

伝統的な暮らしの道具が何でも揃う商店

「米屋守谷富蔵商店」は、八王子駅北口から徒歩10分ほどのところにある。
建物の入口には、歴史を感じさせる木製の看板が掲げられ、店先にはほうきや竹ざるなどの昔ながらの生活用品が並び、伝統的な日本の道具を身近に感じられる。創業は安政元年(1854年)でまさに江戸時代から続く正真正銘の老舗。

五代目の店主の守谷さん
五代目の店主の守谷さん
店先に並ぶほうき。掃除機より手軽とあって人気
店先に並ぶほうき。掃除機より手軽とあって人気

お店では、炊事用品をはじめ日本の暮らしに役立つ、どこか懐かしい竹製品や木製品の「荒物雑貨」も幅広く取り揃えている。こぢんまりとした店内ながら、さまざまな道具が並び、宝探しのような気分が味わえる。「父や祖父は、お客様からこういう商品はない?と聞かれると、あちこち探し回り、仕入れていたそうです。本当にたくさんの商品があり、お客様の要望に応えていました」と話してくれたのは五代目店主の守谷さん。お店の規模は、昔よりも効率よくコンパクトになったものの、お客様の求める商品を多数揃えているところは変わらずに受け継がれている。

さまざまなサイズや形状の竹ざる
さまざまなサイズや形状の竹ざる
日本ならではの雰囲気を味わえる貴重な空間だ
日本ならではの雰囲気を味わえる貴重な空間だ
亀の子束子は、とりわけ人気が高いという。種類も豊富
亀の子束子は、とりわけ人気が高いという。種類も豊富

季節ごとに店頭に並ぶ商品が変わるのも、この店の魅力のひとつ。四季とともに暮らしてきた日本の生活文化を感じられる。「昔のものが見直されてきており、若い方々も足を運んでくれます。昔のものって、お手入れが面倒くさいこともありますよね。でも、そこがいいところでもあります」と守谷さんは、昔ながらの道具を生活に取り入れる楽しさも教えてくれた。

「良い道具を長く使いたい」「日本の伝統的な生活用品を手に入れたい」という方は、ぜひ一度訪れてみてはいかがだろう。

基本情報

日本語名称
米屋守谷富蔵商店
郵便番号
192-0081
住所
東京都八王子市横山町15-1
電話
042-624-2277
定休日
土曜日・祝日
時間
月・火・木・金曜日 10:00-18:00 / 水・日曜日 10:00-17:00
クレジットカード
不可
公式サイト
公式サイト

日本の出汁文化を感じられる豆・乾物専門店

「埼玉屋本店」はJR八王子駅北口から徒歩約20分。周辺には昔ながらの商店が並び、どこか懐かしい雰囲気が漂うエリアに佇む。歴史を感じさせる瓦屋根の建物。落ち着いた色合いの店舗正面からは、中の様子が見えるので気軽に立ち寄りやすい雰囲気だ。乾物の種類が豊富で店内には出汁素材がずらり。初めての方でも安心して選べるよう店主が丁寧にアドバイスしてくれる。創業150年を超える伝統を守りながらも、どこか親しみやすい魅力を感じるお店だ。

瓦屋根に赤が目を引くファサード
瓦屋根に赤が目を引くファサード
のれんはお店によって形が異なる。埼玉屋本店ののれん
のれんはお店によって形が異なる。埼玉屋本店ののれん
気さくで親しみやすい店主の長谷部さん
気さくで親しみやすい店主の長谷部さん

「出汁(だし)」とは、昆布やかつお節などの素材(乾物)を煮たり、水に浸して作るうま味の成分を引き出した液体で、日本の食文化「和食」の基本となっている。出汁を取るための素材は何でも手に入るが、出汁素材以外でもおすすめなのは他では買えない完全オリジナルの天然醸造味噌だ。無添加にこだわり、余計なものは一切加えておらず、素材本来の味を最大限に引き出し、深く厚みのある味に仕上げている。口にした瞬間、豊かな自然の恵みと、人の手仕事が感じられる贅沢な一品だ。

看板商品の天然醸造味噌
看板商品の天然醸造味噌
ところ狭しと並ぶ乾物
ところ狭しと並ぶ乾物
さまざまな豆を取り扱っている
さまざまな豆を取り扱っている

「乾物を使う文化を残していきたい」と語るのは、店主の長谷部さん。「味噌汁を自分で作ろうかな、ちょっと出汁を取ってみるか、などと思った時、最初はスーパーで適当に鰹節を買って試してみることが多いかもしれません。でも、ぜひ一度、うちに来てみてください。スーパーのような価格ではありませんが、どれを選んでも安心できる品質のものが揃っています」と、温かい笑顔で教えてくれた。

基本情報

日本語名称
埼玉屋本店
郵便番号
192-0053
住所
東京都八王子市八幡町3-19
電話
0120-804-308
定休日
日曜日
時間
10:00-19:00
クレジットカード
公式サイト
公式サイト

まとめ

大型の量販店にはない個人商店の専門店ならではの魅力が確かに存在する。ここで紹介した創業100年を超えるお店ではまさにそのような魅力が感じられるはず。良いものを吟味して買う。スマホひとつで簡単に買い物ができる時代に、あえて遠回りするような買い物体験をぜひ楽しんでほしい。八王子には、老舗の個人商店がたくさん残っている。日本の古き良き暮らしに根づいた「良いもの」を探しに、町を歩いてみてはいかがだろう。