萬松堂

奈良県中央部にそびえ、山域全体が世界遺産に登録されている吉野山。そのシンボル的存在で修験道の総本山である金峯山寺の門前に、参拝者から親しまれるお店がある。明治時代の創業から一世紀以上にわたって歴史を重ねる老舗和菓子舗、「萬松堂」だ。

名物は、桜の花を封じ込めた寒天と抹茶色の羊羹の2層からなり、甘味と塩味のバランスが絶妙な「桜羊羹」。国内屈指の呼び声高い吉野の桜を、春以外の季節にも楽しんでほしいという思いが込められた吉野銘菓だ。吉野山の桜は御神木であるため、わざわざ伊豆から取り寄せた桜の花を使っている。

また、契約農家が栽培したヨモギをたっぷりと搗き込み、添加物不使用で仕上げた草餅は、昭和天皇に献上されたという逸品。自家製餡の上品な甘みがヨモギの風味を引き立て、素朴な中にも奥深い味わいが感じられる。